将棋ファンなら一度は読むべき将棋マンガ8選

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hirakekoma1きんどう本に触発されて、自分でブログメディアを立ち上げてみたい……と思ったときに、始めに思いついたのは「将棋マンガのレビューサイト」だったのだけれども、日本の将棋人口と電子書籍を購入する層の比率などを試算していて、ビジネスとして運営するには、あまりに費用対効果が出なさそうだったので、やめた。

週間少年ジャンプで「ものの歩」が連載される等、将棋マンガが注目される下地は整っているようにも思えるけれども、さすがに、ニッチ過ぎるだろう。

なので、ここで紹介する将棋マンガは、私が読んで、兎に角、これは面白い!知って欲しい!と思ったものだけをチョイスしている。連載誌の関係で知名度がありそうな「ものの歩」以外の将棋マンガの中から、8作品紹介しておきたい。

お薦め順に、1位から8位までの順位をつけたが、異論は認める。

第8位 聖―天才・羽生が恐れた男

聖―天才・羽生が恐れた男 (1) (ビッグコミックス)

聖―天才・羽生が恐れた男」は、故・村山聖九段の生涯をうまく9冊にまとめており、ストーリーの大部分は、取材や「聖の青春」の内容に基づいて描かれているフィクションだ。フィクションと言っているのは、この漫画のテーマのひとつである村山聖九段の純粋さを現すために、(作品としては必要な部分だっただろうとは思うが)対比となる悪役として架空のプロ棋士を登場させた部分などがあった。

聖の青春」の他には、島朗が主催する島研究会(羽生善治名人、森内俊之九段、佐藤康光九段が所属していた)のエピソードなども取材していたのではないかと思われる。当時の棋界の雰囲気が感じられるのも興味深い。

第7位 しおんの王

しおんの王(1) (アフタヌーンコミックス)

しおんの王」の原作者のかとりまさるは、元女流棋士の林場直子のペンネームだ。

主人公の紫音は、幼い頃に何者かに両親を殺害されたショックから、事件の記憶と言葉を喪失してしまっており、物語は、主人公の紫音が、その持ち前の素直さも武器に、将棋界で活躍していく部分と、この事件の真相を明らかにしていく部分とが絡み合いながら、進んでいく。

将棋ミステリー漫画として読めばよいのだろうか。設定自体は、かなり、ぶっ飛んでいて、ヒロインの相手役の青年が女装して女流棋士として活躍していたり……突飛な部分もあるが、なぜか読まされてしまう……というのは、ストーリーが面白いからなんだろうな、と思う。

第6位 盤上の詰みと罰

盤上の詰みと罰 : 1 (アクションコミックス)

しおんの王」を将棋ミステリー漫画として紹介したが、「盤上の詰みと罰」も同じ将棋ミステリーの範疇に入ると思う。元六冠王の女流棋士の霧島都は、5年前のある対局がきっかけで1ヵ月毎に記憶がリセットされるという症状を患っている。

この5年前の対局相手を探すために、霧島都が全国を旅していくのだけれども、そこでの様々な出会いを中心に話は進む。

5年前に指導対局で出会った少年と再会しても、その青年が「あの時の少年」と同一人物と霧島都は気付くことができない。そこにすれ違いの切なさがあり、なんとも、引き込まれた。

完結編まで読んで、あーこれは(5年前の対局相手を探す)ミステリーではなく、恋愛漫画だったのだと気付く。その感動のためにも、実際に読んでみていただきたい一篇である。

第5位 5五の龍

5五の龍 [文庫版:コミックセット]

5五の龍」を第5位という中途半端な位置に入れたことで、往年のファンからはお叱りを受けるかもしれない。それだけ、金字塔的な作品なのだ。

真剣師を父に持つ駒形竜がプロ棋士の養成機関である奨励会を目指し、その中で同じく奨励会員となった仲間たちと切磋琢磨していくのがメインのストーリーだ。

中原誠永世名人から 「マンガとしての面白さも一級、棋書としても名著に加えたい一冊」と評価されている通り、読み進めていくうちに、詰め将棋や次の一手問題、更には駒落ち定跡までもが学べてしまうという稀有な漫画である。

主人公の龍が編み出した”5五龍中飛車戦法”は、実際にプロ棋士の深浦康市九段が羽生善治名人を相手に指したこともあるという本格的なもので、その一点からも、並みの将棋マンガではない……と分かる。

第4位 ハチワンダイバー

ハチワンダイバー 1 (ヤングジャンプコミックスDIGITAL)

ハチワンダイバー」を一言で表すとなんだろう。メイド将棋格闘漫画とでも呼ぶしかないかもしれない。

元奨励会の青年・菅田健太郎が秋葉原でメイド姿の受け師に導かれ、真剣師との戦いに巻き込まれていくのが、ストーリーだが、途中からは格闘漫画になるし、作者の柴田ヨクサル氏の別の著作「エアマスター」の登場人物は乱入してくるし、実在のプロ棋士が登場して大活躍を見せるし、とにかく、やりたい放題で走り抜けた……といってよいエネルギーの塊のような漫画だ。

そのストーリーの骨子は、菅田健太郎の成長物語なのかもしれないが、とにかく、その熱量がすごくて、細かいことが気にならなくなる。(一時期、ウェブ界隈でも話題になっていた「序盤・中盤・終盤、隙がない」ネタも取り込んでくるあたり、ヨクサル氏はやりたいことをやり切ったのではないか、と思わせる)

第3位 3月のライオン

3月のライオン 1 (ジェッツコミックス)

3月のライオン」は、プロ棋士である17歳の桐山零を主人公として、家族を失った桐山零と、同じく両親を失った川本家の三姉妹の交流を主軸にしており、その設定の重さからも、なんとなく哀しい雰囲気を漂わせている。

個性的な棋士たちとの掛け合いなどがギャグパートとして挟み込まれていて、それは面白いのだけれども、そのギャグパートが哀しさを軽減させるかとういうと、そういうわけでもなく、逆に優しさや哀しさを際立たせているような……そんな不思議な雰囲気の物語は、将棋ファンならずとも一度は味わって欲しい作品だ。

第2位 或るアホウの一生

或るアホウの一生 1 (ビッグコミックス)

連載誌がマイナーすぎて、あまり知られていないであろう名作候補だ。まだ、完結はおろか単行本も1冊しか出ていないため、これからのマンガなのだとは思うが、期待値も含めて、第2位とした。

或るアホウの一生」は、過酷な奨励会を抜け出す一歩前の三段リーグに参加する奨励会員たちの話だ。実際の三段リーグも「或るアホウの一生」で表現されている以上に必死で余裕のない世界なのではないか、と思われるが、とにかく、ここに登場する奨励会員たちの必死さと余裕のなさが、突飛な行動を生み、それがギャグになっているのだけれど、それが面白さではなく、逆に心を打つ……という点で稀有な作品だと思う。

参考 将棋漫画「或るアホウの一生」の滑稽で必死な世界

将棋漫画「或るアホウの一生」の滑稽で必死な世界
『或るアホウの一生』は、トウテムポール氏による将棋漫画だ。 ちなみに、将棋の監修は橋本崇載八段が担当している。 物語は、...

第1位 ひらけ駒!

ひらけ駒!(1) (モーニングコミックス)

ひらけ駒! 」は、将棋をテーマに母子の日常を描いていくという南Q太による作品なのだけれど、とにかく、この母子の心情がリアルで、胸に迫るのだ。

将棋そのものがテーマというよりは、将棋に打ち込む息子とそれを見守る母親という構図で話が進み、その点でも、他の将棋漫画とは一風変わった作品となっている。(母の女流アマ団体戦編や女流棋士のマイナビオープン編もあるが、主軸は、この母子の物語だ)

南Q太は、本作を描くきっかけを息子の将棋熱にあてられて……と、どこかのインタビューで応えていたが、母子の心情がリアルで当たり前だ。リアルに著者が感じた感情なのだから。

出てくる風景や将棋大会、棋書、プロ棋士など、実在のものが多く、それがリアルさの裏づけになっているけれども、それだけではなくて、奨励会未満の子供たちとその周辺の登場人物が本当にリアルで、そこが、とにかく、胸を打つのだろうと思った。

参考 ひらけ駒!は、単なる母子の日常漫画ではない

ひらけ駒!は、単なる母子の日常漫画ではない

まとめ

将棋マンガをテーマに……ということで、ここまでを千駄ヶ谷の将棋会館道場の近くのルノアールで書いている。どれも、将棋ファンであれば、楽しめる作品だと思うので、是非、読んでみて欲しい!

そして……「ひらけ駒! 」や一部の作品については、ここで書いただけだと、うまく魅力を表現できている気がしない。これは、また、別途、記事にしてみたい。