『ひらけ駒!』の菊池宝少年の成長を追う ~初段免状授与前まで~

この記事の所要時間は約 8 分 です。

宝少年のライバル登場!

ひらけ駒!』の二巻では、宝少年のライバルとも言うべき子どもたちが登場する。特に、花田みずきちゃんは、全編を通して屈指の才能の持ち主だ。その魅力については、別のエントリーでも語っているので、そちらも読んでいただきたい。

宝君の初段免状授与前までの軌跡(11話から15話まで)

第2巻の16話で初段免状を授与される話があるのだが、便宜上、そこまでの話を、宝少年の級位者時代と位置づけて、紹介するつもりだった。ただ、宝君、11話を越えたあたりから、既に連盟会館道場で二段の棋力になっており、これを級位者扱いするのは、流石に無理があるかなーと思い直し、「初段免状授与前までの軌跡」と題することにした。

ここでのハイライトは、花田みずきちゃんと大塚大樹君の登場である!

第11話「初めての棋譜」

買い物帰りの母の元に走って帰ってくる宝少年。チャリチャリと鳴るのは、駒キーホルダーの音。千駄ヶ谷にある連盟道場では、連勝や昇級昇段の度に賞品がもらえたりするのだが、この駒キーホルダーはそれであろうか。

駒キーホルダーがいっぱい

宝少年の台詞「今日2回やって2回勝った!一度も勝ったことない三段の人に初めて勝った!」という報告に「平手で?」と聞く母。「うんそう」と宝少年が答えているので、ここから宝少年が二段認定であることが分かる。あれ?宝少年、前話まで級位者じゃなかったっけ?と少し混乱するが、勝ち継ぎ券の図柄から対局していたのは、将棋サロン吉祥寺であることが判明。(将棋スクール1級、連盟道場初段、将棋サロン吉祥寺で二段なのだろう)

宝少年が会心の将棋の棋譜を残しておきたくて、棋譜ノートに棋譜を書くことになるのだが、11時を過ぎてもパシパシと駒の音が鳴っている様子は、将棋好きの子がいる家庭だと”あるある”ネタだろうか。本当は子どもは寝た方がよいはずだけれども、夢中になっているのは、なかなか止められない。

夜中の11時に駒の音が聞こえることに気がついた母の図

第12話「兄と呼びたくて」

21時半を過ぎても帰ってこない宝少年をイライラと待つ母。遅くなった理由は将棋道場の年上の友人に付き合っていたからなのだが、中学一年生で4級ということで、そこまで強いわけでもない年上の少年に宝君が惹かれるのは、この少年の言うことがいちいちかっこよいからなんだろうな。

ちょい役の少年がかっこよかったりするのが『ひらけ駒!』の見所

「将棋強いのに、大人も子どももかんけーない!」と言い放つ姿を宝少年がキラキラした眼で見つめてるのが、印象的なひとコマ。

第13話「いけ!将棋少女」

第2巻前半のハイライトはこの話かな、と思っている。そんなに登場回数が多いわけでもないのに、とにかく印象に残る天才少女みずきちゃんの登場回である。

将棋スクールの将棋大会で、主人公の菊池宝少年は「1・2級の部」に出場しているのに対して、二学年下の小学二年生の花田みずきちゃんは「初・二段の部」で圧倒的な実力を見せる。

ほとんど時間を使わずに勝ち続ける花田みずきちゃん。
無表情で淡々と指している。

長考の末、相手が指した手に対して、みずきちゃんは0.5秒で応手を指して、相手を投了に追い込む。周囲の子どもたちも、ほとんど時間を使わずに勝つみずきちゃんが気になってならない様子が描写されている。

冒頭でみずきちゃんが読んでいる詰め将棋の本は、谷川浩司九段による『光速の詰将棋』なわけだが、これを読む小学二年生って、凄すぎる。

 光速の詰将棋

みずきちゃんが解いているのは『光速の詰将棋
かなりの棋力の持ち主であることが分かる。

淡々と……表情も変えずに勝ち続けるみずきちゃんだったが、父親が様子を見に来た時にぱっと笑顔になって、駆け寄る。しかし、肝心の父親は、五段で研修会に入っているみずきちゃんの兄のことばかりを気にしていて、みずきちゃんの優勝を喜ぶ様子はあまりない。むしろ、父よりも、無関係なはずの周囲の大人たちの方がみずきちゃんの優勝を喜んでくれているかのような描写が少し切ない。

淡々と将棋を指していたみずきちゃんが笑顔になるのは、パパに話しかける時だけなのだが、肝心のパパはお兄ちゃんのことばかり気にしている。

優勝賞品を抱えながらも……あまり嬉しそうではないその姿が少し切ない。

場面は変わって、「将棋サロン吉祥寺」で指すみずきちゃんは、どうやら二段扱いの様子。ここでも、長考を重ねる対局相手を0.5秒で投了に追い込むみずきちゃん。手合いカードを見ると、最低でも6連勝以上はしている様子。

ここでも会話から、みずきちゃんの兄が「小学生王将戦」で優勝したことが分かるのだが、これはおそらく「倉敷王将戦」のことだろう。そして、そんな兄よりも自分の方が強い……とさらっと言い放つみずきちゃんの姿がまぶしい。「みずきの方がお兄ちゃんより強いんだもん」は印象的な台詞だ。

「みずきちゃんは入らないの?研修会」の問いに、
「だって、今入ったら、追い越しちゃう。
 みずきの方がお兄ちゃんより強いんだもん」
と応える名台詞。

第14話「宝のライバル」

将棋教室を訪れる母子。この将棋教室の講師は、水嶋比呂介三段とのことだけれども、このモデルは、元奨励会三段の故・天野貴元さんではないかと思われる。

この後も何度か登場する将棋教室の講師、水嶋比呂介奨励会三段。

前話では、小学二年生の花田みずきちゃんが登場したが、この回で登場する小学一年生の大塚大樹(おおつか たいき)君もかなり才能がある子だと思われる。宝少年は、この話では既に連盟道場二段になっており、大樹君は、そんな宝少年から1勝しているわけで、おそるべき小学一年生である。

作中の初対局は宝少年の勝利に終わるのだが……

小学一年生には見えない。
堂々たる指し姿の大塚大樹(おおつか たいき)君。

母は勝手にこの大樹君を宝少年のライバル認定するわけだが、「くやしくない?そんな小さな子に負かされて」という母の台詞に対する宝少年の「小さくても強い子はいっぱいいるよ」という返し。将棋を指す子の親であれば、身に覚えのあるやり取りなんじゃないだろうか。

第15話「いつかきっと」

将棋道場では昇級・昇段の時や規定の連勝をした時には、賞品がもらえることがあるのだが、母が宝少年に「どうぶつしょうぎ」をリクエストする。この「どうぶつしょうぎ」だが、12連勝しないともらえない賞品で、金曜日はワインを飲むことに決めているほろ酔いの母の「12連勝してよ」という要求に「そんなにかんたんに勝てないよ……」と独白する宝少年。

しかし、宝君は、風呂場でも将棋の本を読んでいる。暇さえあれば将棋に触れている様子が見られ、これはすごいなあ、と思う。

結果、11連勝まで進んだものの最後の対局で敗れ、泣きながら帰ってきた宝少年。

「潰された!11連勝」
「あんなに勉強したのに……がんばったのに……だめだっ」

こういう熱いシーンがある『ひらけ駒!』は、単なる母子の日常漫画だとは思えないわけだ。勝利にかける宝少年の姿が熱い!

連勝賞品(おそらく10連勝賞品)をもらい忘れて、後日、取りに行くことになるのだが、駒石鹸をもらい、笑顔になる母子の姿で締め。

タイトルの「いつかきっと」は、道場で宝少年が目にした五段の松山君のことだろう。この松山君、小学6年生の時は5級で、五段になったのは中学生になってから……とのことで、その話を聞いた宝少年は、いつか自分も五段になって奨励会を受けるんだ、と心の底で思ったに違いない。

まとめ

次回から紹介する16話以降だが、16話と17話を除き、基本的には母メインの話になってくる。10話「母めざめる」で、将棋にめざめた母が、なんと女子アマ団体戦に出場するのだ!

このあたりの話も宝少年の成長っぷりを追いかけるという一連の記事のテーマから少し外れるが、なかなか面白い描写が多いので、引き続き、紹介していきたい。