ビジネスの達人からのバーチャル講義~『ザ・プロフィット』~

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ザ・プロフィット 利益はどのようにして生まれるのか

評価:4.0 (★★★★☆)

  • ビジネスの達人のバーチャル講義
  • 実例が豊富な利益の仕組み
  • ビジネスをテーマにした良書リストとしても使える

ザ・プロフィット 利益はどのようにして生まれるのか』は、ジャンルとしては、ビジネス小説になるのだろうか?

同じような装丁で、ほぼ同時期に発売された『ザ・ゴール ― 企業の究極の目的とは何か』の方が、当時は注目を集めていたわけだが、個人的には『ザ・プロフィット 利益はどのようにして生まれるのか』も同じくらいお薦めできる名作だ。

ちなみに、著者のエイドリアン・J・スライウォツキーは、ドラッカーやゲイツ、ウェルチ等とともに「経営に関する世界の六賢人」と評されたこともある人物で、このスライウォツキーが分類した23の利益モデルを、実例を交えながら、説明してくれるというのが本書だ。

達人チャオの指導を追体験する

主人公は、デルモアというコングロマリット型の大企業で働くスティーブだ。

ザ・プロフィット 利益はどのようにして生まれるのか』の物語は、主人公であるスティーブが、自社の業績落込みを改善するために、ビジネスの達人として名高いチャオを訪ね、教えを請うところから始まる。

チャオの授業は、土曜日の早朝に行われるため、読者が1週間に1章のペースで読み進めていくと、生徒役のスティーブの立場を追体験することが可能だ。つまり、ビジネスの達人であるチャオの指導をバーチャルで受けることができるという仕掛け。

講義の中で、チャオからは、毎回、何らかの課題が出されるわけだが、スティーブの立場に立ち、これに取り組むことで、学びがあるはずだ。この仕掛けが、実によくできている。

毎週、提示される課題図書については、この本の巻末で一覧化されている。邦訳されているものも未邦訳のものもあるわけだが、これが示唆に富んだリストであり、そのうちの十数冊は、私も実際に読んでみた。師であるチャオが「○○の本の第○章を読んで、○○について、考えてくること」などと課題を出すのが、まさにバーチャル講義……という感じだ。

(なお、ビジネス書ではないが、チャオの課題図書の中にあった『アインシュタインの夢』は、個人的に、出会えてよかったと思う一冊だ)

バーチャル講義を受ける楽しみ

23の利益モデルは、スライウォッキーの別の著作『プロフィット・ゾーン経営戦略―真の利益中心型ビジネスへの革新』が元になっている。彼の提唱する利益モデルを知るだけであれば、こちらの本を読むという選択もある。

それでも、今回、私が敢えて『ザ・プロフィット 利益はどのようにして生まれるのか』をお薦めしているのは、このバーチャル講義を受ける仕掛けがよくできている、と思うからだ。

ちなみに、課題図書として、チャオはプロフィット・ゾーン経営戦略』もおススメしてくれるので、『ザ・プロフィット』の講義に真摯に取り組んでいけば、自ずと『プロフィット・ゾーン経営戦略』も読むことになるわけだ。

スティーブの立場で、チャオの講義を受けるというバーチャル体験こそが、この本の大きな魅力となっている!

私的な思い出

私が、某コンサルティング会社に勤めていた頃の話。

起業の夢を語る同僚の一人に、この本を薦めた。起業には、利益の仕組みを理解することが大切だと思ったからだ。

そのやり取りを聞いていた当時の上司が、話に割って入ってきた。

「いや、その本の正しい読み方はそうじゃない。正しい読み方を教えてやろうか」とのことで、彼の主張するところは、こんな感じだった。

「その本が教えてくれるのは、利益モデルではないんだ」

「企業の収益構造がモデル化できるという考え方こそを学ぶべき」

「紹介されている利益モデルに感心しているうちは、二流の読み方しかできていないということ」

その考え方は理解できるが、その一方で、そもそも、本の読み方に正しいもくそもあるか!とも思う。それに……そんな読み方をしては、スライウォッキーが仕掛けたバーチャル講義が楽しめなくなるではないか!?

そう思った私は、コンサルや起業志望者である前に、本読みだったのだろう、と今は思う。