2016年8月に、衝撃的な記事を目にする。「オライリーの薄い本まとめ」と題された記事を見た時に、どこぞの誰かがマニアックな同人誌でも書いているのか、と思ったのは、だいぶネットに毒されていた気がする。
この元記事で主張されていることには同意で、薄くても、内容が濃いオライリー薄本は、お勧めである。
むしろ300ページ以下の安価な薄い本のほうが楽に読破でき何回も読み返すことになり、結果的に身になることのほうが多いように思える。
「オライリーの薄い本まとめ」より
紹介されている5冊のうち、3冊は読んだことがある(もしくは、今年の8月と9月に読んだ)のだが、すばらしい本であることに同意。
私がオライリーの薄い本をランキング化するとしたら、以下のような感じになる。2冊は元記事とは被っていない。
第1位 プレファクタリング
リファクタリングの概念が注目を浴びていた頃に発売された名著だと思う。オブジェクト指向とは何なのか、ということが曖昧にしか理解できていたなかった当時の私にとっては、衝撃的な本だったため、薄い本と聞いて、これを1位にしないわけにはいかなかった。
CDレンタル店のシステムを開発するという流れで、リファクタリングの手間が軽減されるような綺麗な設計とは何なのかというテーマで様々な考え方が述べられる。オブジェクト指向を説明するのに、動物オブジェクトやそれを継承する犬オブジェクトなどを用いて説明している本が多かった当時、実際のCDレンタルの業務に即して進んでいくこの本の内容は、一線を画していたと思う。
第2位 JavaScript : The Good Parts
JavaScriptの言語仕様には、よい部分と悪い部分がある。よい部分だけを用いてコードを記述すれば、おのずと良いプログラムコードが書ける、というのが、著者の主張だろう。
個人的には、買って良かった技術書のベスト10には、間違いなく入る。サイ本とも言われる「JavaScript 第6版」の方が網羅性は高いのだろうと思うが、実際、コードを分かりやすく囲うとするには、この「JavaScript: The Good Parts」の一冊だけでも充分だった。
様々な状況において、必要になりそうな知識が、一通り、紹介されているのもよい。
第3位 リファクタリング・ウェットウェア
ソフトウェア開発の実践においてプログラムの改善にリファクタリングが欠かせないのと同様に、人間の脳(ウェットウェア)をリファクタリングするのも重要だ……として、効果的に脳を使う方法が載っている304ページ。
元記事では、薄い本を300ページ以下と定義してそうなので、4ページほど超過しているわけだが、これを外すわけにはいかない。
何かを上達する上での、効率的な学習の方法論とも言うべき内容が知的好奇心を刺激してくれる。「ドレイファスモデル」や「LモードRモード」の話など、興味深い内容が続く。技術書ではないが、技術者の方にも役立つはずだ。
第4位 エンジニアのための時間管理術
システム管理とは仕事ではなく、ライフスタイルだ!という本質を突いた導入から始まり、システム管理者にとってのタイムマネジメントやタスク管理の手法がこれでもかと並べられる。エンジニア以外にも応用が利きそうな内容で、これも一読の価値あり。
時間を浪費させるものの例として「無駄な会議」や「大量のメール」だけでなく、「レンタルビデオで迷う」「洗濯と掃除」などの生活の中での無駄までがリストアップされ、その解決策が述べられているのは、圧巻である。
仕事や生活の効率化に役立つTIPS集としても使えそう。
第5位 JavaScriptパターン
JavaScriptの言語の特徴を元に、さまざまな工夫がされた実装パターンが紹介されているので、手元において、何度か読み返したくなる。前述の「JavaScript: The Good Parts」と読者層が被りそうだし、内容にも被る部分があるかもしれないと思ったが、結局、両方、買った。
実は、まだ、最後まで読み切れていないため、最終的な評価を下すことはできないが、どうやら扱っている内容は「JavaScript: The Good Parts」よりも多い。その分、読むのには、力がいる。
実装例を読んでいるだけでも、JavaScriptについての知識が増えていくのは実感でき、結果、買って良かったと思っている。これも「オライリー薄い本ベスト」の中の1冊だろう。
おまけ
ちなみに、先日、リリースした「将棋盤アプリ」の制作は、上記のJavaScript本の2冊がかなり役に立った。久しぶりのコーディングだったが、JavaScriptの可能性を感じることができたのは、良かった。
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